Select Language

大規模サイバー攻撃リスクに晒されるブローカー

大規模サイバー攻撃リスクに晒されるブローカー

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2021.08.31 15:27
大規模サイバー攻撃リスクに晒されるブローカー

update 2021.08.31 15:27

顧客情報保護の徹底と、安全な取引環境を提供する必要性

リテールFX・CFD業界向けのテクノロジープロバイダーであるPanda Trading Systems(本社:145 Jaffa Road, Beit Galim, Floor 1 Haifa, 3525114 Israel[1])【以下、PandaTSと称す】は、マルウェア(有害ソフトウェア)の一種であるトロイの木馬が、リテールFX・CFDブローカーの間で感染・蔓延し、被害が拡大していると警告を発している。

PandaTSのサイバーセキュリティ部門が、複数の顧客のコールセンターにあるコンピューターの定期点検の際に、ハッカーが仕掛けたマルウェアを発見し、ネットワークがウィルスに感染していることを確認したようだ。現在監督当局による調査中のため、ハッカーの特定及び公表には至っていない。また、PandaTSが確認したサイバー攻撃以外にも、英国金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority, FCA)規制下のブローカーも含め複数のリテールブローカーに、マルウェア感染が広がっている模様だ。

サイバー攻撃の手順は、まずハッカーがアフィリエイトマーケターになりすまし、リード(見込み顧客)リストを請求書とともにブローカーへ送りつける。そして、スプレッドシートまたはワード文書をダウンロードし、「コンテンツの有効化」等ボタンを押すと、マルウェアに感染してしまうといったものである。

PandaTSでは、異なるタイプのマルウェアを確認しているが、その中でも多いのが強力な自己拡散能力を持つEmotet ウィルスである。ハッカーはブローカーをEmotetウィルスに感染させ、パスワードや電子メールアドレス、銀行口座番号などを盗み取るという。更に有害で企業に致命的な打撃を与えるマルウェアもあり、そのマルウェアに感染すると、ハッカーがユーザーのコンピューターをサイレントモードのままリモートアクセスできてしまうことから、ユーザーがコンピュータースクリーンを見ていても、ハッカーがアクセスしていることに気づけないという。サイバーセキュリティの専門家によれば、この種のマルウェアは2017年にウクライナを襲った大規模サイバー攻撃や数年前に起きた複数の銀行へのサイバー攻撃に使われたものに酷似していることが明らかになっており、ネットワーク内のコンピューターに感染が広がらないよう、特別な対策をとる必要があると警鐘を鳴らしている。

PandaTSの業務開発部門バイスプレジデントであるDikla Sheffer氏によれば、組織化されたハッカー集団は、リテールFX・CFDブローカーのブローカレッジ部門やアフィリエイトネットワーク、PSPs(Peer Stream Protocol、P2Pプロトコル)、VOIPs(Voice over Internet Protocol、IPネットワーク上で音声通話を実現させる技術)、そしてその他のオペレーティングシステムにサイバー攻撃を仕掛けているとのことである。PandaTSでは、コンピューターウィルスを発見次第、警告を発すると共に、その情報を共有することにより、業界全体でサイバーセキュリティ対策を講じる意識付けを行っているという。

また、ハッカーはFX・CFD業界以外にも、様々な業界のリテールブローカーや複数の大企業を標的としており、盗んだ顧客情報をダークウェブ(一般的な検索サイトにはひっかからず、閲覧には匿名通信システム専用のブラウザが必要なWebコンテンツ)上で売り捌いていることも明らかになっている。データ保護関連ソリューションを提供するLPSのCEOであるBoaz Gam氏によると、データを盗み取ることは、サイバー犯罪者の間で一大産業となっており、企業はリード情報を保護する対策を講じなければ、サイバー攻撃を受けた場合、ビジネス機会を失うと共に、コーポレートブランドを傷つけられる上、場合によっては適切な対策を講じなかったとして法的な制裁を受ける可能性もあるという。

マルウェアの感染を防ぐことは、一般的なアンチウィルスソフトでは難しくなってきている状況であり、PandaTSでも、マルウェアにコンピューターが感染しているか否かを確認するテクノロジーを開発しているようだ。しかしながら、マルウェア対策としては何よりも、見知らぬ第三者から送られてくるファイルをむやみにダウンロードしないことが最善の策といえるかもしれない。

ブローカーや大企業を標的とするサイバー犯罪が多発している中、2018年に英国の投資家が投資詐欺で約2億ポンド喪失したことも報じられている。FX・CFDブローカーにとっては、サイバー対策費用は嵩むかもしれないが、顧客情報の適切な管理・保護を第一に考え、安全な取引環境を提供していく必要があることは明らかである。

release date 2019.02.22

出典元:

ニュースコメント

FX、CFD業界のサイバー攻撃への対策

サイバー攻撃による仮想通貨業界への被害が年々増加する中、今やFX、CFDブローカーもその標的となっている。多くの企業においてサイバーセキュリティー対策にかかる費用が問題視される中、一部の仮想通貨取引所では、違法取引の検出や、サイバー攻撃の調査に繋がる技術を有するブロックチェーン企業とのM&Aも発表されており、FX、CFDブローカーにおいてもこのような企業との協働による対策が望まれる。ただし、マルウェア対策においては、画期的なテクノロジーの開発を待つだけでなく、個々のリテラシーの向上も課題の1つとして挙げられる。今回、PandaTSが発見したマルウェアの感染経路は、なりすましメールの添付ファイルであると説明されているが、リテラシーを向上させ、基本的なルールを徹底することで、今後、大規模な感染を未然に防げるかもしれない。昨年では、仮想通貨のモネロが、マルウェア対策の学習サイトを設立しているが、このように仮想通貨業界の前例に倣って、FX、CFDブローカーも一刻も早く対策を講じ、ユーザーのリテラシー向上に貢献することで、ハッカーによる脅威からユーザーを守ることにつながることは間違いない。


Date

作成日

2019.02.22

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

もう国内銀行送金は使えない?法改正で海外FXトレーダーを直撃する3つの入出金リスク

資金決済法の一部改正により、海外FXユーザーの間で、当たり前のように利用されてきた国内銀行送金による入出金が使えなくなる可能性が浮上しています。法改正が海外FXに与えるリスクと現時点で考えられる対策を説明します。
update2025.07.01 19:00

Exnessの出金方法から銀行振込が一時削除!?現在は復旧も今後は代替手段の検討が必要か

2025年8月、Exnessの出金方法から一時的に国内銀行振込が削除され、オンラインウォレットと仮想通貨のみ利用可能な状態となりました。現在は復旧していますが、今後のトラブルに備えて、代わりの決済方法の準備を検討するのが望ましい状況です。
update2025.08.06 19:00

海外FX利用で国内銀行口座の凍結が増加?法改正後の入出金リスクとは

SNS上で海外FXユーザーの銀行口座が凍結されたことが話題になっています。本記事では、SNSで話題の凍結報告の背景を説明するほか、海外FX業界に迫る「本当の入出金危機」と今後の備えについて解説します。
update2025.07.09 19:00

【当サイト限定】FXONの口座開設でボーナス15,000円をプレゼント!既存ユーザーも対象

2025年8月1日より、FXONでの口座開設で15,000円のボーナスを獲得できる、当サイトMyforex限定のキャンペーンがスタートしました。この記事では、ボーナスの受け取り方法や注意点などを説明します。
update2025.08.01 19:30

海外FXに仮想通貨で入出金する方法は?規制強化で仮想通貨送金が最適解か

海外FXの入出金ルート封鎖が加速しており、SNS上では「銀行口座が凍結された」といった投稿も見られます。そんな中、注目を集めているのが仮想通貨での入出金です。この記事では、海外FXに仮想通貨で入出金する方法や、仮想通貨送金時の注意点などを解説します。
update2025.07.15 19:00

GMOコインからBybitに送金してみた!送金手数料や最低送金額なども解説

Myforex編集部では、GMOコインからBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2025.06.10 20:00

Vantage Tradingで出金拒否やトラブルが多発中?SNSで報告相次ぐ原因とは

Vantageで原因不明の出金拒否が、多数発生している声を取り上げていきます。Vantageで出金拒否が発生する理由や実際にVantageへ問い合わせた際の回答などもあわせて紹介していきます。
update2025.05.16 19:00

SBI VCトレードからBybitに送金してみた!手数料や送金時間も解説

Myforex編集部では、国内取引所のSBI VCトレードからBybitに仮想通貨を送金してみました。本記事では、送金手順や手数料、送金時間などを紹介します。
update2025.06.11 19:30

MT4初心者必見!FX自動売買EAバックテストのよくあるトラブルと対策集

バックテストをした際にEAを選択できない、途中でテストが止まる、結果が安定しないなどの症状が発生することがあります。本記事では、バックテストをした際に発生する症状別に対処方法を解説します。
update2025.05.13 19:00

ThreeTrader・Vantageが消えた?偽アカウントによる詐欺に注意

ThreeTraderやVantageのX(旧Twitter)公式アカウントに表示制限がかけられていることが確認されました。本記事では海外FX業者のアカウントが制限された背景や、こうした状況で注意すべき偽アカウント詐欺について説明します。
update2025.07.04 19:00
口座開設で15,000円のボーナス 口座開設で15,000円のボーナス

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル