Select Language

年始のフラッシュクラッシュでブローカーに甚大な損失

年始のフラッシュクラッシュでブローカーに甚大な損失

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.11.10 13:39
年始のフラッシュクラッシュでブローカーに甚大な損失

update 2022.11.10 13:39

9億4,300万円に上る追証未収金が発生

1月3日東京市場が開く前の早朝に起きた日本円のフラッシュクラッシュは、STP方式を採用する日本のブローカー及び円通貨ペアを取引するトレーダーに甚大な損失をもたらした。

約10分間に発生したこの度のフラッシュクラッシュは、ニュージーランド取引時間では非常に流動性が低い時間帯であったことから、スリッページの拡大と共に、次々にロスカット注文を巻き込み、クロス円主導で全ての主要通貨ペアが急落(日本円は急騰)する形となった。

日本のブローカーは、日本特有の規制枠組みの下で追証なしのゼロカットシステム(negative balance protection)を適用していないことから、甚大な損失を被る結果になったと言えよう。2015年1月に、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行がユーロ/スイスフランの上限撤廃を決定したことをきっかけとするスイスフランショックとは影響の度合いが違うとしても、ゼロカットシステムを適用しないブローカーやトレーダーが巨額の損失を負ったという点では同じことを繰り返していると考えられている。

金融先物取引業協会によれば、日本のブローカーは、2019年最初の取引日において、合計9億4,300万円(8,600万ドル、月次速報値)に上るロスカット等未収金が発生しているとのことである。[1]顧客区分別に見ると、個人・法人のロスカット等未収金発生件数はそれぞれ6,389件、209件となり、発生金額にして、個人が8億800万円(740万ドル)、法人が1億3,500万円(120万ドル)に上る。なお、スイスフランショック時のロスカット等未収金額は、合計で約34億円(現在の為替レート換算で3,100万ドル)となり、まさに甚大な損失であったことが見てとれるであろう。

また、日本のブローカーにとっては、FX相場の急変動により再び多額の損失を被った事実から、リスク管理の脆弱性という課題が浮き彫りになったと言える。一方で、海外FXブローカーは、円通貨ペアの取引量がさほど大きくないことから、1月3日のフラッシュクラッシュによる影響は限定的なものであった模様だ。また、マーケットメイキング(値付け)業務を手掛けるブローカーの中には、膨大な利益を上げるところも出ていたようである。

この度のフラッシュクラッシュをきっかけに、金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)が個人投資家向けのレバレッジ制限やゼロカットシステム適用の有無を議論する可能性が浮上したと考えられる。多額の損失を被ったブローカーにとっては、ゼロカットシステムを適用するか、再び損失を受けることを良しとするか2者択一の選択に迫られている状況だ。なお歴史を振り返れば、ヨーロッパで起きたスイスフランショック以降、リテールブローカーの間でゼロカットシステムを適用する機運が高まったことは確かであろう。

release date 2019.01.31

出典元:

ニュースコメント

フラッシュクラッシュに揺れる相場

1月3日に起きた日本のフラッシュクラッシュでのロスカット未収金として報告された9億4,300万円は、2015年のスイスショックの約34億円、2011年の東日本大震災の約17億円に次ぐ規模となる。2015年、中国人民元の切り下げや中国株の大暴落が要因となって起きたチャイナショックでのロスカット未収金は9億2,200万円と報告されており、今回のフラッシュクラッシュはチャイナショックよりも未収金額が大きいものとなった。このような大規模なボラティリティは頻繁に発生するわけではないものの、Bloombergによれば、日本の3日以上の連休に相場の急変動が起こりやすい傾向にあるのではないかと推測されており、日本では月曜が振替休日になる政策の影響で3連休が多いことに加え、今年は皇位継承に伴う一連の儀式もありゴールデンウィークが10連休になるという長期休暇も控えている。年初のフラッシュクラッシュから始まり、ボラティリティが高くなることが予想されている2019年の相場の動きには今後も注意が必要のようだ。


Date

作成日

2019.01.31

Update

最終更新

2022.11.10

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Bybitが日本ユーザーの新規登録を停止!日本撤退で海外FXユーザーにも影響大か?

Bybitが2025年10月31日をもって日本ユーザーの新規登録停止を発表しました。既存ユーザーは継続利用できるものの、締め出しも時間の問題と予想する声も少なくありません。本記事では、Bybitの発表内容や海外FXユーザーへの影響などを解説します。
update2025.11.06 19:00

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

FXGT破綻の噂がSNSで再浮上、CEOは「完全なデマ」と否定

海外FX業者のFXGT(エフエックスジーティー)が「経営破綻の危機にある」との噂が一部で広がっています。噂が流れているのは主にX(旧Twitter)で、FXGT公式はこれを否定しています。当サイトではFXGTにこれらの噂について、事実確認を行いました。
update2025.11.04 19:30

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30

XMはゴールド(XAUUSD)のスプレッドも広い?ボーナス取引で実質お得

XMTradingのゴールド(XAUUSD)はスプレッドこそ狭くないものの、スワップフリー口座や豪華ボーナス、約定スピードの速さで十分に利用の検討余地があると言えます。当記事ではXMTradingでゴールド取引が向いている・向いていないトレーダーを他社と比較しながら解説していきます。
update2025.10.22 19:00

XMTradingの入出金で銀行口座凍結?海外FX禁止の銀行に注意

SNS上では「XMTradingの出金で銀行口座が凍結された」とする投稿が一部で見受けられます。銀行によっては海外FXとの取引を禁止しているため注意が必要です。本記事では凍結リスクが高い銀行や仮想通貨送金の注意点を説明します。
update2025.09.03 19:00

Exnessで10月に2度もサーバーダウン!?SL設定のユーザーは損失補填

海外FX業者のExnessで、10月に2度のサーバーダウンが発生しています。一連のトラブルが原因で、損失を被ったユーザーも少なくないようです。本記事では、報告されている不具合やExnessが実施した補償などについて説明します。
update2025.10.30 19:30

メタマスク等の利用が規制対象に?金融庁がDEXの規制を議論

暗号資産WGでの議論を発端に、SNS上で「DEX利用が非合法化されるのでは?」といった投稿が話題になっています。本記事では、金融庁で議論されたDEX規制の現状や、SNSで広まる情報の真偽、海外FXユーザーへの影響などを解説します。
update2025.10.28 19:00

SwiftTraderが資金難?SNSで出金トラブル報告が増加

2025年以降、SwiftTraderで出金拒否・遅延の報告がSNSで相次いでいます。本記事では報告されている出金トラブルのほか、GEMFOREXとの類似点やSwiftTraderをおすすめしない理由を説明します。
update2025.10.16 19:30

香港エキスポでAxiブースが襲撃される、規約違反のトレーダーによる抗議と判明

香港で開催された「iFX EXPO Asia 2025」の会場で、海外FX業者Axiのブースが襲撃される騒動が発生しました。騒動を撮影した動画がSNS上に投稿されたことで、一部の海外FXユーザーの間で注目を集めています。本記事では、今回の襲撃騒動の経緯とAxi側の説明などをご紹介します。
update2025.11.04 19:00

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル