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間近に迫るブレグジットに揺れる英国とEU

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update 2021.08.31 15:27
間近に迫るブレグジットに揺れる英国とEU

update 2021.08.31 15:27

英国拠点の金融機関は慎重な対応が求められる展開

英国テレサ・メイ首相率いる英国政府とEU(欧州連合)との間で合意された離脱協定案の議会採決が刻一刻と迫っている。仮に英国が合意なき離脱へと突き進むことになれば、英国を拠点とする金融機関への影響は計り知れないものとなるであろう。

これまでブレグジットの行く末を楽観視していた市場関係者にとっては、まさに最後の審判となるべく議会採決がすぐそこまで近づいているが、ここ数日の間に行われた英国議会のいくつかの議決投票を踏まえると、ブレグジット(英国のEUからの離脱)が如何なるシナリオになろうと、金融機関は困難な局面に対峙することが見込まれる。1月7日の週、EU圏の財務相らは、英国で事業を営む全ての企業に対し、自国にて拠点を開設すべきとの意見で一致している。現在英国を拠点とする多くの金融機関が、ブレグジットの流れがより明らかとなるまで行動を控えていたことを踏まえると、早急に事業の再構築を図らざるを得なくなり、甚大な影響を与えるものと見られている。

そして、およそ3,000に及ぶ金融機関が、単一経済地域を形成するEUにて引き続き顧客サービスを提供すべく、EU圏内への拠点開設に着手し始めた。しかし、ライセンスの取得や人員の配置転換、新たな子会社の最適地の模索に苦慮している状況だ。他方、欧州議会では、ECB(欧州中央銀行)を始め金融監督機関の権限強化を模索し始めている。最悪のシナリオである合意なき離脱(ハードブレグジット)となり、EU諸国と英国との間で、自国の利益のみを優先した有害な金融商品取引が行われるリスクを食い止める狙いがある模様だ。

また、EUのブレグジット担当当局では、当初、300億ユーロ以上の資産を誇る金融機関に対し厳格な規制を適用させる計画であったが、直近はそれを半分の150億ユーロまで引き下げ、メガバンクを始め、プロップトレード(証券会社などにおいて自己資金での運用)を行う金融機関やマーケットメイカー(常に売り気配、買い気配を提示し、相対取引を基本に売買を成立させる業者)、アンダーライター(有価証券の引受業者)などを対象に厳格な規制を敷く模様だ。一方で中小金融機関に対しては、比較的規制の緩いプルーデンス政策(金融システムや金融機関の安定性・健全性を保つことを目的とした政策)が用いられる見通しである。これらの規制策は、5年間の移行期間後に適用される運びである。

英国議会は、離脱協定案が否決された場合、テレサ・メイ政権に時間的猶予を与えないよう、3日以内に代替案を提示することを求めた動議を賛成多数で可決させている[1]。議会としては、金融機関などへの多大な影響を鑑み、合意なき離脱だけは避けたいという意図が垣間見える。仮に合意なき離脱へと突き進めば、英国政府は求心力を失い更なる窮地に追い込まれるであろう。

なお、英国の金融監督当局である英国金融行動監視機構FCAは金融パスポート継続措置を導入することを発表しているが、これは、ブレグジットに備えたコンティンジェンシープラン(緊急時対応)として導入しており、ブレグジット後の短期的な対応策である。他方で、規制策が目まぐるしく変化する中、証券化商品の取引情報蓄積機関(Securitization repositories)の業務負担・コストの高まりが懸念される他、ブローカーや決済機関などと顧客が締結している現行契約の継続性を確保することも課題して挙げられよう。

ブレグジットに絡み、英国とEUが今まさに最適な規制枠組みの構築を模索している中、英国は2度目の国民投票を実施する瀬戸際まで追い込まれている。そのような環境下において、英国の金融機関にとっては神経質な対応が求められる展開が続く見通しだ。

release date 2019.01.11

出典元:

ニュースコメント

最悪のシナリオは回避できるのか

英国は、移民問題を優先してEUの関税同盟(加盟国間での貿易で関税を無くす一方で、加盟国外からの輸入品には関税を設定すること)を犠牲にするEUからの離脱を選択したわけだが、離脱の過程は「ソフトブレグジット」「ハードブレグジット(合意なき離脱)」の2つのシナリオが想定されてきた。ワーストケースは、EUと条件合意を一切行わずに離脱する合意なき離脱であるが、EUと英国との離脱をめぐる条件が未だ合意に至らないため、この最悪のシナリオが現実となる可能性が高まりつつある。なお、解釈により若干の違いはあるが、ソフトブレグジットとは移民流入を制限しつつ域内無関税となる単一市場にも残留する方法、ハードブレグジットは移民流入の制限と単一市場へのアクセスを失うことを指している。離脱協定案の議会採決が間近に迫っているが、仮に合意なき離脱となる場合、これまでにない税関手続きなどへの対応により、生活用品の品切れや物価高騰などが発生する恐れがあり、金融機関等への影響とともに、市民の生活に多大な影響が及ぶ可能性が指摘されている。英国は合意なき離脱を回避することができるのか、世界中からの大きな注目が集まっている。


Date

作成日

2019.01.11

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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